Hits.42 競技団体の懐具合 (ふところぐあい)
2018.3.9


 熱狂の中、平昌(ピョンチャン)冬季五輪が終了し、平昌冬季パラリンピックが始まりました。
 帰国した五輪メダリストの様々なニュースがメディアに溢れる中、報奨金も話題になりました。日本オリンピック委員会(JOC)からの報奨金と、各競技団体からの報奨金、あるいはスポンサーからの。
 1992年のアルベールビル冬季五輪から始まった、JOCからのメダリストへの報奨金(当初金メダルは300万円でしたが、リオ五輪から500万円に増額)。現在は金500万円・銀200万円・銅100万円はすべての競技者共通です。が、そのスポーツ別に中央競技団体からの報奨金は違います。
 今回の冬季五輪の競技別報奨金、テレビ番組の放送で観ましたが、多くのファンができたであろうカーリングは、ゼロなんですね。理由が笑っちゃった。「無い袖は振れない」うん、うん、うん、わかるわー。
 どう考えても競技人口の少ないであろうカーリング、当然登録会員だって少ないし、競技団体としては小さい。となれば、そりゃーお金は無いよね。全日本アーチェリー連盟(全ア連)と同じよね。
笹川スポーツ財団による
 2016年度 中央競技団体現況調査(PDF)
によると、登録者数は、
 日本カーリング協会 2,454人(男1697人、女752人)
 全日本アーチェリー連盟13,394人(男9,595人、女3799人)
ちなみに一番多かったのは、日本サッカー協会 995,670人(男941,553人、女54,117人)ですが、それよりも多いんじゃないかと想像される日本野球連盟は調査回答が未回収、つまり答えていないので不明です。
 ここでいう登録者数とは「その中央競技団体に登録している人」(指導者も含む)です。たとえば市民ランナーでたまにマラソン大会も出てるよって人でも、日本陸上競技連盟に競技者登録していなければ、そのタイムは公認記録にはなりません。(高校などで部活動に入っている場合は、高校体育連盟の各競技専門部を通して中央競技団体に加入している事になります。その競技が高体連に加盟していれば、ですが)
 競技団体の収入は登録者からの登録料、事業収入(観戦者の入場料、協賛金、放送権料など)、寄付金、補助金・助成金、資産運用収入、その他で構成されていて、収入規模の小さい団体ほど登録料比重が高い傾向です。それは収入1億円未満の14団体では51.3%なのに対し、10億円以上の12団体ではわずか17.7%です。
 人気競技なら登録会員も多いし、競技会もテレビ中継で放送権料も入るし、スポンサーも付きやすいし、ってわけでマイナースポーツの場合は、その逆になるからですね。
 日本スケート連盟(7,503人、男女別は未回答)は登録者数は少ないですが、事業収入(スポンサー! 放送権! 入場料! グッズ! 写真集! などなど)が多いためか報奨金が出せる体力があるんでしょうね。主に観る競技と、やる競技の差、とも言えますが。
 競技団体別の報奨金が出せる余力のある所と、袖が振れない所があるわけで。その競技団体の懐具合(ふところぐあい)で決まるわけです。

 2016リオデジャネイロ五輪ではアーチェリーはメダルが無かったので不明ですが、2012ロンドン五輪の時、アーチェリー女子団体で銅メダルの早川漣選手が銅メダルの100万円で整形手術をという話題を振りまきましたが、これはJOCからの報奨金の事で、その後全ア連からの報奨金についてのニュースは覚えが無かったので、ゼロなのかな、と。
 日本障がい者スポーツ協会(JPSA)も、五輪同様の報奨金を目指してはいるものの、なかなか難しいようで、それでも可能な範囲で改定をし、現在は金150万円・銀100万円・銅70万円です。
 トップ選手になるまでに選手個人は競技力向上の努力の他に、多くの場合、遠征費用等の自己負担があります。スポンサーからのメダルの報奨金が高額でいくらだとか、浮かれたように伝えるメディアもありますが、それまでの努力と費用を考えるのならば(そして引退後の長い人生を思うのならば)、それは決して高額とは思いません。
 同じく笹川スポーツ財団
 2014年度 オリンピアンのキャリアに関する実態調査(PDF)
によれば、1年間の自己負担額がゼロの選手も若干はいますが(P26〜P28)パーセンテージを人数に直してみましょう。その方が実感がありますから。すると男女合わせて負担ゼロの選手は、
 夏季競技25人(254人中)、冬季競技5人(71人中)しかいません。
負担を平均にしてみると、夏季男女共に200万円越え、冬季男性も同様で、なんと女性は400万円を超えてます。
 パラリンピアンについては日本パアラリンピアンズ協会のまとめた、
パラリンピック選手の競技環境 その意識と実態調査(PDF)
があります。設問の金額の区切りが違うので一概には言えませんが、費用負担はオリンピアンより少ないように思います。これはむしろ、健常者に比べて日々の生活を維持するのが難しいため、費用が高額になった場合、競技を続けていけないからではと想像できます。
 競技団体が弱小で強化費の予算が少ないのならば、もっと国がサポートして欲しいです。
「競技力向上」を掲げるのなら、選手たちがお金の心配をしないで競技に打ち込めるような環境を、国が作って欲しいと思います。
 才能と努力だけではオリ・パラには出られない、お金を工面できる才能も無くては・・なんて、悲しいでしょ。
 それとも「それも選手の才能の内だ」って言われちゃうんだろうか?
がんばれ、マイナースポーツ!



近況:もうすぐ、息子と酒が飲める。
あと、ちょっと!
ポン!とワインを開けるわ!